就業規則のトラブル事例~長期休職中の社員を辞めさせたいけど・・・
[内容]
S社[IT系・従業員15名]に勤務しているHさんは半年ほど前より
休みがちになり、その後2ヶ月ほどたって専門医より「うつ病」と
診断され休職していました。
その後ようやく回復したとのことで復職したのですが、復職後
3週間でうつ病が再発したとのことで再度休職に入ってしまいました。
その後も復職しては再発を繰り返す日々が続きました。
この状況にS社のT社長は、Hさんの解雇を決意したのです。
そこでHさんに「申し訳ないが、うちの会社では休職期間は
1年と決まっている。きみが大変な状況なのはわかるがこの規程に
基づいて解雇しなければならない」
と伝えたところ、Hさんはこれに対し、
「確かに会社の規程では、就業規則にもある通り休職期間は最大1年と
決まっているのはわかっています。でも、私はこれまで1年以上の休職はありません。
長くても3~4ヶ月程度です。
通算すれば、確かに1年以上になりますが、休職期間を通算する
という規程は就業規則(休職規程)のどこにも記載ないですよね?
それに私だって故意に休職しているわけじゃないし、会社の規程
から見ても解雇される理由はありません!」と反論した。
そして、これがきっかけとなりその後のトラブルへと発展したのです。
[結果]
・S社の休職規程には、Hさんの言う通り休職の通算には
何ら規程がなかった
・当初は感情的な対応をしていたT社長だったが、この時点で初めて
社会保険労務士に相談しHさんの主張の正当性を理解した
・結果、T社長はHさんを解雇することはできなかった
————————————————————
[解説]
休職に関するこれまでの相談事例を見ますと、まだ精神疾患が
それほど世間では騒がれなかった頃に就業規則を作られた会社が
就業規則の見直しを怠っていたために起こるケースが多いです。
そもそも、労働基準法の中で「休職制度を設けること」という規程は
存在していませんが、この規程は労使双方にとって重要な規程です。
今回の事例から就業規則を見直す場合、ポイントとしては、
・休職期間、休職理由、休職中の賃金などの規程は適切か。
・休職期間の通算についての規程は盛り込まれているか。
・疾病等で休職が長期化した場合の対応として、主治医以外の
専門医の受診を指示できる内容の追加
・休職期間満了後において、私傷病等が回復せず復職できない場合は、
自然退職にする内容の追加
以上のような内容を確認し、不足している規程は就業規則等で
明文化しておくことが大切です。
タグ
|
カテゴリ: 就業規則
就業規則のトラブル事例~無断欠勤の労働者を解雇できるか?
〈事例内容〉
C社(商社)の社員Hさんが無断欠勤をするようになって2日目。
さすがに上司のD社長は我慢できなくなりました。
自宅や携帯電話にかけても全く連絡がとれません。
Hさんは、ここ最近営業成績が思わしくなく、D社長からはいつも
皆の前で叱られていました。
特に無断欠勤の前日は、夜中近くまでD社長から叱られ続けて
いたのです。
D社長は営業成績もよくないくせに、さらに無断欠勤までするとは、
けしからん!と怒りが治まりません。
そこで、D社長は明日、もし何らかの連絡がない場合は、
解雇しようと決意したのです。
そして翌日。
やはりHさんからは連絡がありませんでした。
そこでD社長は予定通りに、Hさん宅に解雇を通知する内容証明
郵便を送りました。
ところが、これでようやく落ち着いたと思っていたところに
Hさんの代理人から会社に対し、解雇は不当との内容証明郵便が
届いたのです。
これに対しD社長は、連絡もよこさないくせに解雇不当とは
どういうことだ!
と全面対決の姿勢をみせたのです。
[結果]
労働契約を締結している以上、正当な理由なく労働提供義務
を尽くさないのは債務不履行になる。
しかしながら、就業規則の解雇事由にあるからとの理由で、
3日程度の無断欠勤でいきなり解雇とする処分の正当性は
認められない。
————————————————————
[解説]
就業規則の解雇事由にあるからとの理由だけで、
今回の様な3日程度の無断欠勤でいきなり解雇することは
認められないケースがあるという事例です。
本事例でHさんは、無断欠勤の原因がD社長の叱責にあると
主張しました。いわゆるパワハラです。
ですからもしD社長の叱責が原因で、Hさんの状況がうつ病や
対人恐怖症など深刻な状況に陥っていれば、D社長に対する
損害賠償請求の問題へと発展する危険性もでてきます。
では、会社としてはどのような対応が望ましいのでしょうか?
まず最も重要なことは、感情に流されないということです。
本事例では、D社長の怒りっぽい性格が推察できます。
解雇を前提に考えれば、案件にもよりますが2週間~1ヶ月程度の
期間をみるべきです。
また、全く連絡がとれない場合は公示送達という方法もあります。
これは、裁判所経由で行うもので掲示板への掲示や官報などでの
公告により行うものです。
この場合は、公告後2週間を経過すると、相手に意思表示が到達
したとみなされます。
いづれにしても、絶対に焦ってはいけません。
冷静な対応を心がけて下さい。
タグ
|
カテゴリ: 就業規則
契約短縮・雇い止め無効 派遣元に賃金支払い命令
資生堂鎌倉工場(神奈川県鎌倉市)の女性派遣従業員7人が、契約期間中の解雇や雇い止めは無効として、派遣元のアンフィニ(茨城県つくばみらい市)に地位確認と賃金支払いを求めた仮処分申請に対し、東京高裁(鈴木健太裁判長)はアンフィニに賃金支払いを命じる決定を出した。決定は21日付。
決定などによると、7人は5月末まで最長で8年5カ月間、同工場で口紅の製造に従事していた。アンフィニは資生堂の減産通告を受け4月、契約期間終了を当初の12月末から5月末に前倒しし、うち5人を同17日に解雇した。横浜地裁は10月、申請を却下する決定を出し、7人は即時抗告していた。
高裁決定は、契約期間短縮を「従業員に著しく不利益となるにもかかわらず、告げなかったのは著しく不当」と指摘。雇い止めも「信義則上許されない」として無効と判断、地裁決定を取り消し、12月末までの賃金を支払うよう命じた。
これに対し、アンフィニは「真摯に受け止める」、資生堂広報部は「コメントを控えさせていただく」とした。
タグ
|
カテゴリ: 労働問題